導入事例

2023.10.11

大阪大学 設計工学研究室様

メニーコアサーバ「HPCT RG1E42」ならびに静音ラック「HPCT SR80」を導入いただきました。

大阪大学設計工学研究室 矢地謙太郎先生にお話を伺いました。

優れた革新的なデザインの実現を目指して

大阪大学設計工学研究室様では、優れた革新的なデザインを実現することを目指して、製品の開発や設計を価値・コスト・時間などについての様々な要因を総合的かつ系統的に考えつつ合理的に進めていくための理論や方法論、コンピュータ援用技術に関する教育と研究を行っており、4つの方向性を定め以下のテーマを展開されています。

Concept

  • ディープラーニングを活用した設計概念の分類と発見
  • 概念設計のための発想支援フレームワーク

Structure

  • 縮約最適化の先導による創成設計法
  • トポロジー最適化による構造と機能の創成
  • トポロジー最適化による構造と機能の創成

Architecture

  • 大規模で複雑なシステムのための階層的な最適設計法
  • プロダクトファミリーの包括的最適設計

Process

  • 複合領域システム設計のための知識管理システム
  • 設計プロジェクトのリスク評価と計画管理

大阪大学 設計工学研究室

http://syd.mech.eng.osaka-u.ac.jp

矢地謙太郎先生

http://syd.mech.eng.osaka-u.ac.jp/~yaji/index-jp.html

ハイエンドプロセッサ AMD EPYC 192コアサーバが研究を加速 

メインフレームにはじまり現在では研究室にクラスタサーバ、GPUサーバ、メニーコアサーバを設置し研究を進められています。
メインフレームを使われていた頃の苦労話もお聞きしたいところですが、今回は導入された最新のメニーコアサーバをどのような研究に使われているのか、Intelでは無く何故 AMDプロセッサを選択したのかなどをお聞きしたいと思います。

 

まずは矢地先生の研究内容を教えてください。
Concept, Structure, Architecture, Process の4つのうち、主として Structure に関係するトポロジー最適化に関する研究を行っています。
トポロジー最適化は、予め用意した設計領域において「どこに材料を置けば最も性能が良くなるのか?」という最適化問題を数値計算によって解くことにより、これまでに無い新しい形状・形態を生み出す方法として世界各国で研究が盛んに行われています。私の専門としては、特に流体関連の最適化問題にこれまで力を入れて取り組んできており、例えば熱交換器やレドックスフロー電池の流動場の最適化といった研究に取り組んできました。

 

AMD EPYC コア数合計 192コアサーバを導入されましたが、サーバの用途を教えてください。
主な用途としては、機械学習を利用した新しいトポロジー最適化の開発です。
具体的な目標として、超高次元設計空間における非勾配型トポロジー最適化の実現を目指しています。従来のトポロジー最適化は一般に感度(評価関数の設計変数に関する勾配)を頼りに解探索を行う勾配法を基本とするため、いわゆる局所最適解しか求まらず、複雑な最適化問題であるほど、感度情報がかえって足かせとなり有望な設計解の獲得が難しくなる傾向にあります。この問題の抜本的な解決には、進化的アルゴリズムといった感度を使わない大域的な解探索を可能とする方法が選択肢に挙がるのですが、こういった感度フリーの方法は、設計変数の次元が大きくなるにつれ計算コストが指数関数的に増大する、いわゆる次元の呪いの影響を受けるため、高い設計自由度を売りにするトポロジー最適化との相性は良くありません。そこで、超高次元設計空間であっても計算コストを比較的抑えることができる、言うならば次元に呪われない進化的トポロジー最適化を実現するために、機械学習を利用した生成モデルを組み込んだ新しい方法を近年提案しました。
やや前置きが長くなってしまいましたが、この方法では、生成モデルによって最適化の反復計算毎に構築する潜在空間から網羅的なサンプリングを行い、それらの解候補を並列処理で一気に性能評価を実行するため、今回メニーコアのサーバを導入しました。

 

以前導入されたメニーコアサーバも AMD前世代で最高コア数の 64コアを 2基搭載した合計 128コアサーバでいらっしゃいますが、そのサーバと比較して大きく向上したことなどございますか。
一度に投入できるコア数が 1.5倍になったので、我々が取り組んでいる独立した数値シミュレーションの並列処理であれば、計算効率を 1.5倍程度まで引き上げることができます。特に、現在開発を進めている進化型トポロジー最適化では、計算機のコア数と最適化計算における探索性能がほぼ線形の関係にあることから、メニーコアの計算機の威力は絶大です。今後、AMDは更にメニーコア化を進めていくようなので、これまで計算コストがボトルネックとなっている問題へさらに挑戦できるようになると期待しています。

 

静音ラックを導入されましたが、サーバルーム以外の場所に設置されているのでしょうか。
研究室の一角にあるサーバルームで利用しています。以前、GPUを 2基搭載しているサーバを導入したこともあり、騒音が隣の部屋にまで聞こえてくる状態が続いておりました。そんな時、とある学会のプレゼンで HPCテックさんの静音ラックを知り、導入を決意しました。おかげさまで導入後はほとんど音が気になりません。また、HPCテックさんには細かい要望も色々と聞いていただき、当研究室における最適なラックを導入することができました。

 

その 2GPUサーバはどのような使い方をされていらっしゃいますでしょうか。
前述の進化的トポロジー最適化の開発における機械学習の部分で利用しています。現状は物理場の数値シミュレーションに大半の計算時間を費やしており、機械学習の方はあまり重たい計算をしていませんが、機械学習の部分ではGPUの方が圧倒的に速いので非常に快適です。今後は機械学習の方も高負荷の計算が必要になってきそうなので、GPUの能力をフルに発揮できるものと期待しています。

 

今後の展望を教えてください。
次元に呪われない進化的トポロジー最適化を軸に、従来法では扱うことができなかった複雑な問題を誰でも簡単に解けるようにしたいです。特に、産業界とも深く連携し、実際の工業製品にも積極的に導入を進め、世の中をあっと言わせる製品を世に送り出すための強力な技術として結実させたいと考えています。

導入システム

HPCT YSR47
静音ラック

HPCT RG1E42
AMD EPYC 9654 x2(Total 192Core)
64GB DDR5-4800 REG ECC x24
(Total 1536GB)
SSD(OS) 960GB x1、SSD(DATA) 7.68TB x1
Gigabit Ethernet x2
1U Rackmount
Dual 1600W 80PLUS Platinum Redundant
Ubuntu22.04 LTS

最後に

矢地先生、ご多忙のところ HPCテック導入事例掲載にご協力をいただき誠にありがとうございました。
これからも研究活動に少しでもお役にたてる様、スタッフ一同微力ながらお手伝いをさせていただきます。

弊社では、科学技術計算や解析などの各種アプリケーションについて動作検証を行い、
すべてのセットアップをおこなっております。
お客様が必要とされる環境にあわせた最適なシステム構成をご提案いたします。